パワハラで退職は会社都合?辞める前の注意点と失業保険で損しない方法

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パワハラを受けて退職を考えるとき、知っておくべきことや注意点を知りたいと思いますよね。

理不尽なパワハラを受け退職をするのであれば、せめて有利な条件で辞めたいでしょうし可能であれば仕返したいと思うのは自然な心理ででしょう。

筆者は人事を10年ほど経験し、パワハラを訴える社員のサポート経験から、注意点や失業保険で損しない方法を熟知しています。

さらに筆者は身内がパワハラを受け退職したため、訴訟を起こし企業と戦った経験もあります。

結論からお伝えすると、パワハラで退職するときは会社都合での退職となるように注力することです。

会社都合にすることで失業手当が早く・長く支給され、退職後の収入に大きな差が出るからです。

またパワハラを受けた場合、小さな証拠でも必ず集めておくことが重要です。

証拠が揃っていれば会社を訴えて損害賠償を受け取ってから転職することも可能となるためです。

厚生労働省はパワハラの典型例として、1.身体的な攻撃、2.精神的な攻撃、3.人間関係からの切り離し、4.過大な要求、5.過小な要求、6.個の侵害、以上6つを分類しています。

引用:働く皆様、ハラスメントを受けていませんか?|大阪労働局

この記事ではパワハラで会社を辞める方に向けて少しでも有利に退職できる方法について解説していきます。

会社都合で辞めるポイントについても詳しく紹介しているため、パワハラでの退職を検討している方は最後まで一読ください。

この記事のポイント

  • パワハラで退職する前にやっておきたいのは、証拠を残すこと、転職先を決めること、労災申請
  • 転職するなら大手優良企業が集まりやすい転職エージェントへの相談がおすすめ
  • パワハラの定義と6つの典型事例
  • 自己都合退職を迫られたときの対処法
  • パワハラでの退職は即日でもOK。

パワハラでの退職は会社都合になるのか?

パワハラが理由で退職する場合は会社都合退職となります。

他にも会社都合退職に該当するのは以下のケースがあります。

  • 会社から無理やり退職を強要される
  • リストラ、パワハラ、解雇など

もし、パワハラが原因で退職する場合は自己都合の退職届は書かないようにしましょう。

退職願や退職届を書くと自己都合退職となり損をしてしまうためです。

パワハラが原因の退職だったとしても退職届・退職願で自己都合の意思表示をしてしまうと解雇無効の判決を得られない可能性があります。

万が一、会社から脅されたり、退職願を無理やり書かされた場合は、後日ハローワークで退職理由について異議を唱えるようにしましょう。

離職票などに関しては本人の印鑑と署名と退職理由への同意が必要となるため、申し出することで会社都合に変更できる可能性があります。

他にも事例として、机の上にお金の束を置かれ退職届の記入を迫られたという方もいます。

その場合、退職届と引き換えに金銭は受け取らずに帰るようにしましょう。

金銭を受け取ってしまうと、退職に同意したと判断されて会社都合退職にならない可能性があります。

会社に慰謝料を請求したい場合にも、自己都合退職は不利となるため「会社都合退職にしてください」とはっきりと伝えてください。

会社都合による退職のメリット

会社都合退職としておくことで退職金規定がある会社であれば割増しを受けられるだけではなく、失業保険をすぐ受け取れるなどのメリットがたくさんあります。

会社都合の退職には、失業保険受給の待機期間が7日と短期間で需給を開始できるためです。

会社都合退職にするメリットについては、具体的に以下の項目が挙げられます。

  • 退職金の割増し
  • 失業保険が待機期間7日間で受け取れる
  • 失業保険を延長できる可能性が高くなる
  • 社会保険料の減免を受けることができる
  • 後に退職が不当だと感じた場合、企業に対して損害賠償請求の裁判を起こすことができる

自己都合の退職だと失業保険の受取に2~3ヶ月(給付制限期間)と7日(待期期間)かかりますが、会社都合だと待機期間7日間のみで失業手当を受け取れます。

参考:雇用保険受給者のみなさまへ|厚生労働省

このほかには会社都合退職で職金の割増しがあるケースや、社会保険の減免を受けることができるなどのメリットもあります。

失業保険は失業期間中の貴重な収入となるため、次の転職先が決まっていない方は特に会社都合退職をおすすめします。

特にパワハラに関しては会社都合退職でかつ不当解雇が認められると、判決の日までの賃金を企業に要求することもできます。

500万円近いお金を企業から受け取ることができる可能性もあるため、パワハラで退職を考えているのであれば、会社都合で退職をするようにしましょう。

パワハラにもかかわらず自己都合で退職を迫られたときの対処法

自己都合で退職を迫られたときの対処法

自己都合退職を迫られたときの対処法として、以下の方法があります。

  • 方法1:退職勧奨には応じないと伝える
  • 方法2:退職をさせる理由と法的な根拠について求める
  • 方法3:会社都合退職で退職金割り増しがあるのであれば応じると伝える
  • 方法4:退職後に自己都合から会社都合に変更できる可能性もある

それぞれについて解説します。

方法1:退職勧奨には応じないと伝える

退職勧奨には応じないと毅然と伝えるようにしましょう。

退職勧奨に応じてしまうと、自己都合退職に押し込まれる可能性が高くなるためです。

絶対に応じないし、退職願も退職届も出さないと伝えるようにしましょう。

退職勧奨は、ほとんどのケースで違法で労働者が応じる必要はありません。

本当は会社都合の解雇や退職勧奨に応じた退職なのに、自 己都合退職などとしてしまうと、基本手当受給の際に不利になってしまいますので、会社 から離職票を受け取ったら、離職理由欄をしっかり確認し、理由が違っていた場合には、 その旨申立てましょう。

参考:仕事を辞めるとき、辞めさせられるとき|厚生労働省

方法2:退職をさせる理由と法的な根拠について求める

退職をさせる理由と法的な根拠について求めるようにして、出来ればスマホなどで録音しておきましょう。

退職させる理由などについて先に録音をしておけば、退職させる理由が正当な理由でなかった場合、強力な武器となるためです。

出来るだけ「なぜ私が辞める必要性があるのですか」という必然性を中心とした質問をし、相手が不利になる言葉を引き出しましょう。

方法3:会社都合退職で退職金割り増しがあるのであれば応じると伝える

会社都合退職にして退職金割り増しがあるのであれば応じると伝える方法があります。

会社都合退職を引き出すことが出来れば、会社にとって不利となるためです。

仮に退職金上乗せや次の転職が決まるまでは全出勤日について有給扱いなどの有利な条件が引き出せれば応じても良いかも知れません。

方法4:退職後に自己都合から会社都合などに変更できる可能性もある

パワハラによって心身ともに追い詰められ、早く会社を辞めたくて既に自己都合退職で退職してしまった方もいるかもしれません。

離職証明書に会社側から自己都合と記載された場合でも、会社都合の『特定受給資格者』や、退職が正当な理由による『特定理由離職者』であると認められる可能性があります。

パワハラによって退職したり疾病、心身の障害を負ったり負傷したりした場合は、特定受給資格者や特定理由離職者の条件に当てはまる可能性がありますので、ハローワークで申し立ての相談をしましょう。

この際、パワハラを受けたという証拠が必要になりますので証拠を集めておくようにしましょう。

参考:特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要|ハローワークインターネットサービス

パワハラで退職する前にとっておきたい4つの行動

パワハラで退職する前にとっておきたい行動

パワハラで退職を考えている方に、退職前にぜひやっておくことをおすすめする行動をお伝えします。

紹介する行動をするかしないかで、退職後の明暗が分かれるためです。

ただパワハラされている会社から逃げられればいい場合や、裁判にするほどの怒りはない場合でも、せめて損しない退職をするためにも必要な行動となっています。

具体的に以下の3つの行動が大切です。

  • パワハラで退職前にやっておくべきこと1:職場や社外相談窓口で相談する
  • パワハラで退職前にやっておくべきこと2:とにかく証拠を残す
  • パワハラで退職前にやっておくべきこと3:次の転職先を決める
  • パワハラで退職前にやっておくべきこと4:パワハラで精神的なダメージを負ったら労働基準監督署に労災申請

それぞれについて解説します。

やっておくべきこと1:職場や社外相談窓口で相談する

パワハラの被害を受けていると感じた場合には、まず職場内の相談窓口に相談をしてみましょう。

それでも解決しない場合や職場の相談窓口が機能していない場合には社外の相談窓口を利用しましょう。

各都道府県労働局、全国の労働基準監督署内などに総合労働相談コーナー(無料)がありますので相談をしてみましょう。

専門の相談員が面談もしくは電話で対応、予約不要、無料です。

差別や虐待、パワーハラスメントなど、様々な人権問題についての相談を受け付ける相談電話です。

最寄りの法務局・地方法務局に繋がり、法務局職員もしくは人権擁護委員に相談できます。

相談はインターネットでも受け付けています。

参考:ハラスメント悩み相談室|厚生労働省

やっておくべきこと2:とにかく証拠を残す

パワハラで退職前にやっておくべきことは、証拠をしっかりと残すことです。

証拠がないと、裁判移行時に立証することが難しくなります。

裁判を起こすほどの気持ちはない場合でも、全ての交渉に証拠は必要となる可能性があります。

暴言であればスマホで録音し、暴行であればできれば暴行の瞬間を動画で録画しておくことが望ましいです。

また、殴られたり蹴られたりといった事件に巻き込まれたら、必ず医師の診断書を取るようにしましょう。

労災認定を受けるためにも必要となるため、必ず証拠は残しておきましょう。

やっておくべきこと3:次の転職先を決める

パワハラで訴訟を起こそうと考えたら、転職先の確保もやっておきましょう。

現実問題として企業を訴訟すれば、在籍している会社に居続けることは難しくなるためです。

出来るだけ転職エージェントなどに登録して、転職活動を水面下でスタートさせるようにしましょう。

弁護士が入って訴訟をすることになれば、実は最初の一回目や証人喚問などの時以外は弁護士が代行してくれるため、他の会社に勤務しながら会社を訴えることは実は十分に可能です。

やっておくべきこと4:パワハラで精神的なダメージを負ったら労働基準監督署に労災申請

パワハラで精神的・肉体的なダメージを負ったら、退職前に労働基準監督署に労災申請しましょう。

労災申請は病院の診断結果を元に労働基準監督署へ相談するため、診断書も必要となります。

ですがここで気をつけたいのが、最初から労基に相談するのではなく、まずは事業主と話し合いをして労災を認めるように説得することです。

理由としては事業主が労災を認めない場合には、労働基準監督署は労災を認めることを避ける傾向にあるからです。

裁判移行時には労災を裁判官が認めるように指示するケースもあるため必要ないという方も念のため申告はするようにしておきましょう。

パワハラで退職する前に精神科を受診して診断書を発行してもらい、労災認定を受けられないかどうかを労働基準監督署に確認してください。

パワハラと認定される6つの事例を紹介

パワハラの定義

パワハラとは職場において次の3要素を全て満たすものと厚生労働省によって定義されています。

  • 優越的な関係に 基づいて (優位性を 背景に) 行われること
  • 業務の適正な 範囲を超えて 行われること
  • 身体的若しくは 精神的な苦痛を 与えること、 又は就業環境を 害すること

正社員として勤続歴の長い先輩や指導役が後輩をいじめるといった行為も、パワハラ認定されます。

パワハラの分類として、厚生労働省は以下の6種類を典型例として分類しています。

  1. 身体的な攻撃(暴行・傷害)
  2. 精神的な攻撃(脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言)
  3. 人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)
  4. 過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害)
  5. 過小な要求(業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)
  6. 個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)

引用:職場におけるハラスメントの防止のために|厚生労働省

上司が部下に怒鳴る・殴る・暴言を吐くということだけがパワハラではありません。

悪質な暴力に関しては、警察も逮捕に動くため社会的な処罰を与えることもできます。

パワハラの分類をそれぞれ解説していきます。

事例1:身体的な攻撃

職場で暴力を受けていたら、確実にパワハラと認定されます。

暴行や傷害などの、身体的な攻撃はどんな理由があろうと許されることではありません。

例えば、仕事の出来が悪かったからと書類で頭を叩かれることも暴力になります。

社会的制裁を与えられる可能性もありますので、泣き寝入りをする必要はありません。

事例2:精神的な攻撃

精神的な攻撃とは脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言が対象となります。

明らかに社会通念上認められない「死ね」「殺す」「辞めろ」この3大キーワードは証拠さえあれば一発で労災認定される可能性があります。

仕事をする職場でそんな汚い言動を使うことは常識ではありえません。

また、「辞めろ」と怒る方は「退職誘導」などの別種の問題も引き起こします。

仕事中に怒鳴ることや机を殴るなどの威圧的な言動もパワハラと認定されます。

普通に話せば分かるものをわざわざ怒鳴ったりする必要性はないためです。

社会的にも認められたことではありません。

事例3:人間関係からの切り離し

隔離・仲間外し・無視することで、人間関係から切り離される行為もパワハラに該当します。

無視されることで職場内で孤立させられて、精神的に追い詰められる人も少なくありません。

仕事のことについて質問しても「知らない」と答えてもらえず、業務に差し支えることもあり得ます。

これらは一見すると幼稚ないじめに見えますが、立派な違法行為です。

また、隔離目的で突然の異動や別室での作業を命じられることも人間関係からの切り離しに当たります。

特別な理由もなく、嫌がらせ目的で上記の行為が認められた場合は、パワハラへの対処を考えましょう。

事例4:過大な要求

無駄な作業を大量に押し付けられたり、明らかに能力以上の仕事を任されたりするのは、過大な要求に該当します。

ただ、将来性に期待した上で能力以上の仕事を任せられるのとは別物です。

業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害には当たらないからです。

ここでいう過大な要求はあくまでも嫌がらせ目的であり、成長を期待してのことではありません。

できなかった仕事に対して叱責されたり、適切なサポートもない場合はパワハラを疑いましょう。

事例5:過小な要求

過小な要求とは業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないことです。

理由もなく重要なプロジェクトから外されたり、重要な仕事をさせてもらえない等がこれに当たります。

本来は別の仕事があるにも関わらず、延々と単純作業だけをやらせられるのも、パワハラである可能性が高いです。

ただ、普段からミスが多く重要な作業を任せられない等、合理的な理由がある場合はパワハラに当たりません。

明らかに合理的でない場合は対処を考えましょう。

事例6:個の侵害

個の侵害とは、私的なことに過度に立ち入ることを指します。

仕事とプライベートの境界線が曖昧となり、プライバシーが守られない状況はパワハラになります。

例えば、有給休暇を取得する際、理由をしつこく問われることも個の侵害になります。

また、飲み会への参加を強要する・恋人の有無をしつこく聞かれる等も対象となります。

人間関係によってパワハラとして感じるかどうかも変わりますが、不快感を感じた場合は対処しましょう。

補足:リモートワークにおけるパワハラ

近年増えてきているのが、リモートワークの中で起こるパワハラです。

新型感染症の影響でテレワークを採用する企業が増えたことで、新たなパワハラに悩む人が増えてきています。

例えば、仕事の進捗について監視レベルで過度に報告を求めることは過大な要求に当たります。

また、オンライン会議中に部屋や服装について言及されることもプライバシーに関わるため個の侵害になります。

「さすがにこれはちょっと度が過ぎているな」と感じたら、それはパワハラの可能性が高いということです。

小さな違和感を大切にしてください。

参考:どんな言動が、パワーハラスメント? | 茨城労働局

もし、パワハラで退職を迫られたら退職願・退職届は書かずに会社都合で退職しましょう。

次は、企業に退職を迫られた場合の対処法について解説します。

パワハラでの退職は即日でもOK?辞めるときの注意点について

パワハラでの退職は即日でも問題ありません。

労働基準法の法律上では正社員は2週間前に会社に退職の意思を告げることになっていますが、パワハラで辞めたいと考えている場合には企業側には社員の安全を確保する義務があります。

厚生労働省によると、労働契約法5条において本人が我慢の限界を超えるようなパワハラを受けているのに放置しておくことは、経営者の怠慢であり、犯罪の放任です。

参考:労働契約法のあらまし 労働契約法5条 安全配慮義務|厚生労働省

安全が確保されないのであれば出勤することはできない、と伝えて退職してしまうようにしましょう。

いきなり辞めて企業に訴えられたらどうしよう、と思われる方もいるかも知れませんが、退職したことに関して損害賠償請求をすることは法律的に認められていません。

職業選択の自由が日本にはあるため、退職したことを理由に裁判をすれば会社側が敗訴する可能性が非常に高くなります。

退職や転職を検討する人は転職エージェントで転職先の内部情報を集める

「もうパワハラをするような企業には入社したくない」と悩んでいる方が転職先探しをするなら企業の内部情報を深く知っている転職エージェントがおすすめです。

転職エージェントは、転職希望者と企業の間に入って様々な書類提出を代行してくれるだけではなく、企業の体質や過去に紹介した人の離職状況などを把握しているためです。

転職エージェントのビジネスモデルは転職希望者が企業に入社したら年収の35%を獲得できるというビジネスであり、もしも早期に退職すると返金をしなければならないケースもあります。

そのため、出来るだけ人が辞めない会社に求職者を紹介してくれます。

また、ほとんどの転職エージェントはアドバイザーが企業の内部事情や職場の雰囲気も熟知しています。

過去にパワハラなどの問題を起こしたことがない企業かどうかなどを聞くことでリスクヘッジをすることも可能です。

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参考文献

監修者

上場・ベンチャー・中堅企業で様々な役割を経験。今なお、採用・人事の業務を最前線で経験し、「いま」の「生きた」知見を発信しています。