「休業手当が出ない・・・」どうすればいいか知りたい人に人事が解説
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休業手当が給付されず
「休業手当が出ない場合どうすればいいの?」
「休業手当が出ないとき相談は誰にすべき?」
「休業手当がでないのは違法ではないの?」
と悩んでいませんか?
筆者は10年以上にわたり人事を経験したため手当に関して精通しています。
その経験に基づいてお伝えすると、たとえば会社の都合で勝手に店を閉めたのにも関わらず会社が従業員に休業補償をしない場合に休業補償しないという行為は違法行為となる可能性が非常に高いです。
なぜなら労働基準法では会社の都合で休業した場合、必ず平均賃金の60%以上を従業員に対して補償しなくてはならないためです。
そのため休業手当がなく生活に困っている方は会社と交渉し、休業補償を勝ち取るようにしましょう。
この記事を読めば、会社の都合で店を閉めたのにも関わらず休業補償を支払わないことが違法行為だと理解できます。
経営者に休業補償を支給してもらう方法もまとめてご紹介していますので
「新型感染症の影響だから仕方ない・・・」
と諦めているあなたはぜひ最後まで一読ください。
目次
休業手当が出ない方は「民法536条2項」と「労働基準法26条」をチェック!
お店が閉まっているのは新型感染症拡大のせいであって会社の責任じゃないのではないかと遠慮していませんか。
お店が新型感染症の影響で閉まっているとしても、休業補償は支払う必要性があります。
何より休業補償が出ないとあなたの生活が苦しくなります。
日本では、経営者が従業員の生活の保障や責任を負うことは民法、労働基準法でも非常に重く定められています。
具体的には、以下の法律をチェックしましょう。
- 民法536条2項では休業手当は100%支給しないと違法
- 労働基準法26条では休業手当は60%以上支給しないと違法
それぞれについて解説します。
民法536条2項では休業手当は100%支給しないと違法
民法536条2項では、以下のように経営者の責任を定めています。
つまり、給料の支払い者である経営者に対して民法では厳しく補償を求めていることになります。
債権者とは給料をいつも支払っている社長等の経営者であり、債務者は従業員となります。
本来働いていればもらえたはずのお給料を経営者は支払う義務があります。
「緊急事態宣言があったから国のせいだろう」という意見もありますが、緊急事態宣言はあくまでも国家から企業への休業のお願い・要請レベルであり、強制力を伴っていません。
緊急事態宣言は法律による要請ではないから企業は従業員に対してお金を補償する必要性があります。
続いて労働基準法ではどのようになっているか確認していきましょう。
労働基準法26条では休業手当は60%以上支給しないと違法
労働基準法26条では休業手当は平均賃金の60%以上支給しないと違法となります。
労働者の責任ではなく経営者の都合でお店を閉めたりした場合、経営者は労働者に対して平均賃金の60%以上の給与を補償する必要性があります。
民法第536条よりも労働基準法26条の方がより広く経営者に責任を求めることができます。
ノースウェスト航空事件においては民法上の責任よりも労働基準法26条の「使用者の責に帰すべき事由」について、経営者側に故意・過失だけではなく不可抗力を除いて経営者側に起因する経営、管理上の障害も含まれると判決がおりています。
参考:ノースウェスト航空事件|労働政策研究・研修機構(JILPT)
厚生労働省でもアナウンスされていますが、労使で最大限話し合って休業補償を支払うかどうかについては決めるように注意がされています。
参考:新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)|厚生労働省
つまり、労働基準法では経営者に対して天変地異災害でどうしようもないというケース以外では休業補償をしなさいという法律になっているということです。
新型感染症は現在のところ、どうしようもない災害とまでは認識されていないため休業補償を支払う義務があると考えられます。
ただし注意点もあります。
【注意】退職者は休業手当が出ない
すでに会社を退職してしまっている場合には休業手当がでません。
休業補償は出勤予定のあった日に会社の都合で出勤できなかったため支給される手当だからです。
退職者はすでに出勤予定のあった日がなくなっているので補償されません。
ただし会社に無理やり迫られて退職をしてしまった場合などは不当解雇となる可能性もあるので弁護士またはユニオンに相談するようにしましょう。
次は、アルバイトでも休業手当を支給する必要性があるという理由について解説します。
休業手当が出ないのは明確な違法行為!休業手当を経営者に求めよう
休業手当は直接雇用である限り、逃れられません。
仮に正社員ではなくパート・アルバイトであったとしても本来入るべきシフトに入れなかった場合、休業補償を行う必要性があります。
以下のようなケースです。
- 休業手当はアルバイトでも支給する必要性あり
- 新型感染症が原因の経営不振であっても経営者は責任から逃げることは出来ない
それぞれについて解説します。
休業手当はアルバイトでも支給する必要性あり
休業手当はパート・アルバイトなどの非正規雇用であっても申請することが可能です。
直接企業が雇用している以上、必ず責任があるためです。
本来入るべきシフトの分の給与や過去の平均賃金(過去3ヶ月の給料の総額を総日数で割ります)を算出するなどしてアルバイトであっても休業補償を行う義務が企業にはあります。
東京新聞では学生アルバイトの休業補償を求めてユニオンが戦っています。
参考:「遊び金なら出さない」 学生バイトに休業補償なし|東京新聞
学生であっても労働者であることには変わりがないため、積極的に支給を求めるようにしましょう。
新型感染症が原因の経営不振であっても経営者は責任から逃げることは出来ない
新型感染症が原因とされる経営不振であったとしても、すべての責任は経営者にあります。
どれほど重いのかといえば民法715条には使用者責任というものがあります。
例えば、従業員が車で通勤途中に人をはねて大けがを負わせた上に無保険だったとします。
従業員は会社で仕事を遂行するために車で通勤をしていたので経営者の責任が問われる可能性が非常に高くなります。
従業員が損害賠償できないのであれば損害賠償を経営者が支払うように求められることもあります。
それほど経営者の責任とは重いものであり、新型感染症が原因の経営不振であったとしても、経営者は休業補償やその他の生活に必要な賃金の支払いから逃れることはできません。
逃れることができるケースとしては会社が倒産した場合です。
まだ会社が存続状態にある以上、従業員の生活保障は必ず行わなくてはなりません。
「休業補償を受け取る権利があることは理解したけれど、具体的にはどんなアクションを起こせばいいの」と気になりませんか。
次は、具体的な対応策について解説します。
休業手当が出ない場合の手段は4つ
「経営者に休業手当を要求したけれど、まったく話を聞いてくれない」という事態に高い確率で遭遇することになります。
そんなときには、以下の手段を考えましょう。
- 社内労働組合で会社と団体交渉を行う
- ユニオンによる団体交渉
- 弁護士に相談し訴訟を起こす
- 労働基準監督署に相談
それぞれについて解説します。
社内労働組合で会社と団体交渉を行う
社内に労働組合がある場合には、会社と団体交渉を行うように労働組合の委員長に掛け合うようにしましょう。
会社内に労働組合があれば団体交渉突入までがスムーズにいくためです。
まずは会社内の労働組合に頑張ってもらうように働きかけましょう。
ユニオンによる団体交渉
ユニオンに加入し、団体交渉を行うという方法があります。
会社内にある内部労働組合とは違い、経営者に対して遠慮せずにガンガンと交渉をかけてくれるのがユニオンの強みです。
実質、経営者と一体的な労使関係になっている社内の労働組合ではなかなか交渉が進まないケースも多々あります。
Yahoo!ニュースではユニオンによる団体交渉がうまくいったという報道がされています。
参考:学生アルバイトにも「休業補償100%」 たった一週間で支払われた舞台裏|(今野晴貴) – 個人 – Yahoo!ニュース
ユニオンは労働問題解決に関して非常に強力な権利を持っており、労働争議に関しては民法上・刑法上の責任を免除されています。
弁護士に相談し訴訟を起こす
弁護士費用がかかる・訴訟を起こし裁判移行するまで時間がかかるという点を除いては実は非常に優れているのが弁護士に依頼して裁判を起こしてもらうことです。
弁護士に任せてしまえば書類提出と打ち合わせのみであとは全て弁護士が会社と交渉してくれます。
また、訴訟が起こったら大変というイメージがありますが、実際は裁判になると何度か裁判所に足を運ぶだけで本人の証言など、どうしても発言が必要なシーン以外は全て弁護士が答弁を行ってくれます。
民事訴訟を起こすとするとまず弁護士費用が20万円から40万円ほどかかります。
また、訴訟を起こすためには書面の準備に2ヶ月程度の時間がかかります。
どちらかといえば、ユニオンによる団体交渉が行き詰まったら弁護士に依頼するという流れの方が休業手当の支払いについては適切な可能性が高いです。
労働基準監督署に相談
労働基準監督署に相談する道もありますが、基本的には時間の無駄となります。
下手をすると「ユニオンや弁護士に相談した方が早い」と言いだして最初から仕事をしない労働基準監督官に筆者は遭遇しています。
基本的に何もしてくれないので、無駄な遠回りは辞めておきましょう。
労基署に行っている間に時間もお金(労働基準監督署に行く交通費すらもったいないです)も無駄にすることになります。
ところでお金に余裕がない方は
「休業手当が出るまでの間にお金がなくなってしまう。どうすればいいの」
と不安になっていませんか。
次は、休業手当以外の給付金や貸付金について解説します。
休業手当以外の給付金も積極的に応募しよう
休業補償が出ない場合には、以下の制度を積極的に利用してみましょう。
- 住居確保給付金
- 緊急小口資金(借金ですが返済期限時に住民税非課税世帯だった場合は返済を免除される可能性あり。給付金となる可能性がある)
- 総合支援資金(借金ですが返済期限時に住民税非課税世帯だった場合は返済を免除される可能性あり。給付金となる可能性がある)
- 国民年金
- 国民健康保険料の減免
- 特別定額給付金(申込受付終了)
参考:生活を支えるための支援のご案内(リーフレット)|厚生労働省
参考:新型コロナウイルス感染症の影響で 収入が減少し 生活に困窮する方へ|厚生労働省
制度を活用すれば家賃などを支援してもらえる可能性があります。
それぞれの制度について解説します。
住居確保給付金
住宅確保給付金は新型感染症の影響で収入が下がったり、会社を解雇されたりした場合に家賃を補助してもらえる制度です。
預貯金の金額や就労の意志があるかどうかなどは問われますが、会社都合で退職した場合には受け取れる可能性が高いです。
3人世帯で最大月52,000円の家賃の補助を原則で3ヶ月、最長で9ヶ月受け取ることができます。
緊急小口資金
緊急小口資金は、20万円を無利子・無担保で借りることができる制度です。
参考:緊急小口資金について|厚生労働省生活支援特設ホームページ
休業等により一時的に生活が苦しくなった方が借りることができます。
もしも返済期限が迫ってきた際に住民税非課税世帯であった場合、返済が免除される可能性があります。
総合支援資金
総合支援金は3ヶ月間、独身者は15万円、2人以上世帯の方は20万円を借りることができる制度です。
参考:総合支援資金について|厚生労働省生活支援特設ホームページ
解雇等で生活の目途が立たない方に向けた融資となっています。
60万円を無利子・無担保で借りることができるようになっています。
また、返済期限に住民税非課税世帯であった場合、返済が免除される可能性があります。
国民年金・国民健康保険料の減免
無職になってしまった場合や新型感染症の拡大を受けて所得が減少している場合、国民年金・健康保険料の減免を受けることができます。
健康保険料に関しては以下の条件があります。
- 前年よりも所得が7割以下に落ち込む見込みがある場合
- 平成31年1月から令和元年12月までの所得の合計が1,000万円以下の世帯(前年所得)
- 世帯主の収入が3割以上減少することが見込まれる収入以外の所得が400万円以下の世帯(雑収入などがある場合)
参考:新型コロナウイルス感染症の影響による国民健康保険料の減免について|札幌市
自分自身の住民票を管轄する区役所に電話をして、減免申請したいと伝えるようにしましょう。
郵送でも手続きは可能ですが、事務手続きが苦手な方はマスクをするなど防衛策を万全にして市役所の窓口で相談しましょう。
また、国民年金に関しては以下の条件で減免がもらえます。
- 令和2年2月以降に、新型感染症の影響により収入が減少したこと
- 令和2年2月以降の所得等の状況から見て、当年中の所得の見込みが、現行の国民年金保険料の免除等に該当する水準になることが見込まれること
参考:新型コロナウイルス感染症の影響による減収を事由とする国民年金保険料免除について|日本年金機構
自分自身でもっとも収入の下がった任意の1ヶ月を選択し、減免の申請をすることが可能です。
こちらも国保と同じく自分自身の住所地を管轄する区役所に相談するようにしましょう。
電話などで事前に準備書類を確認しておくとスムーズですよ。
特別定額給付金
特別定額給付金は国民1人あたり10万円を申請すればもらえる制度です。
参考: 特別定額給付金|総務省
残念ながら前回の給付については既に全ての市町村で申請受付は終了しています。(2020年11月時点)
しかし、新型感染症の感染拡大が収束しない限り、また給付される可能性はゼロではないのでチェックしておきましょう。
自宅に郵送された郵便物を返送する形をとるか、マイナンバーを活用した申請ができます。
マイナンバーでの申請はトラブル多発となっているため、郵送を選択した方が無難です。
まだ書類を送っていない人は早く送りましょう。
交渉に時間がかかりそうなら休業期間中に転職活動をしてしまうのも手段
もしもいますぐにでも就職しないと生活が苦しいという場合には、休業期間中に転職活動をするという方法があります。
ユニオンや弁護士を通じて経営者と交渉して休業補償を勝ち取るという道もありますが、3ヶ月程度の時間がかかることもあり得るためです。
3ヶ月後もずっと休業状態であったり、最悪は会社が倒産する可能性もあります。
状況がより悪くなる可能性もありますので今のうちに転職しておく方が良いかも知れません。
転職エージェント・転職サイトを活用して転職活動をスタートさせるようにしましょう。
おすすめの転職エージェントはマイナビエージェントです。
大手企業〜中小企業まで網羅しているため求人が豊富な上に採用を積極的に行っている業界や企業を紹介してもらえます。
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- 業界・職種ごとの専任アドバイザーが手厚くサポート
- 第二新卒を始めとした20代向けの転職に実績あり
コラム:転職会議に口コミを残しておこう
休業補償の支払いを拒んだり経営者が無理やり解雇してきたなど、違法行為が行われた場合は転職会議室に口コミを残しておきましょう。
まっとうな企業であれば当然に果たす義務を果たしていないような企業はまた同じような労働基準法違反を繰り返す傾向にあるためです。
後の人が苦しんで泣くことがないように、しっかりと記録を残しておきましょう。
まとめ
会社側の都合で従業員を休業させる場合、労基法において経営者は従業員に60%以上の休業補償を行う義務があります。
民法と労基法の両方で請求することができますが、より広く責任を問える労基法上の義務である60%以上の休業補償を勝ち取るようにしましょう。
退職をしてしまうと休業補償は求めることができません。
ただし、違法な退職勧奨を受けた場合には弁護士またはユニオンに相談するようにしましょう。
休業手当はアルバイトであっても支給する必要性があります。
また、経営者には非常に重い責任が課せられています。
会社が相手にしてくれない場合には、以下の手段があります。
- 社内労働組合で会社と団体交渉を行う
- ユニオンによる団体交渉
- 弁護士に相談し訴訟を起こす
- 労働基準監督署に相談
労働基準監督署に相談するのは時間の無駄です。
休業補償が出ない場合には、以下の制度を積極的に利用してみましょう。
- 特別定額給付金
- 住居確保給付金
- 緊急小口資金(借金ですが返済期限時に住民税非課税世帯だった場合は返済を免除される可能性あり。給付金となる可能性がある)
- 総合支援資金(借金ですが返済期限時に住民税非課税世帯だった場合は返済を免除される可能性あり。給付金となる可能性がある)
- 国民年金・国民健康保険料の減免
給付金・貸付金を申請し、苦難を乗り切りましょう。